熊野古道小辺路を歩く

03/04/28

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  数年前和歌山県の熊野博で脚光を帯びた熊野古道はブームが去って最近は古道を歩く人も減っているのではと思う。このブームに触発されたわけでは無いが古道の歴史的な背景に少し興味を持ち、又ロマンを感じ大阪から熊野本宮迄中辺路を歩いたのは2年前になる。去年は熊野古道の一つに数えられる大峯奥駈道を吉野から本宮に、更に熊野古道子雲取越・大雲取越を那智迄歩いた。今回は小辺路を歩く事にした。

  小辺路(こへち)は高野山から熊野に詣でる熊野古道の一つで、古道は大辺路・中辺路・小辺路と距離の遠い順に名前が付けられている。中辺路は皇族や貴族が歩き、また蟻の熊野詣と形容される程の庶民の一般的な熊野詣での道となっていたようだ。一方小辺路は山中の小さな集落を縫うように峠の道が高野山から熊野本宮迄続いている。集落間の物資の輸送や高野山・本宮間を歩く修験者の道として利用されたものの、中辺路に比べて山が深く、中辺路程の賑わいは無かったと思われる。

  近年林道や高野龍神スカイライン等の開通で道が寸断され、歩く人が少なくなり道が判り難くなっているとの情報もある。去年のゴールデンウィークで大峯奥駈道を歩いての帰りの電車で小辺路を歩いた人と出会い、少しの情報を得た。「寸断された路であり、始めての独り歩きでは困難な道である」という思い込みが薄れ、やれば出来るとの思いに変わり、今年のゴールデンウィークを待った。

4月28日 月曜日 1日目

  快晴、先々週には高野山からの小辺路入口の確認を済ませ、大滝集落近く迄歩いて小辺路の状況を確かめておいたので、膝の痛みが出やすく体力的に少し衰えが自覚される以外にはあまり不安要素は無い。テレビの天気予報は水曜日に少し雨が降るかも知れないが、その他の日はおおむね天気が良いとの事で、体をいたわり無理さえしなければ平穏な旅が期待出来そうだ。

8:40 高野山千手院橋バス停を降りて金剛三昧院の参道に入り、小辺路の縦走をスタートした。

8:55 大滝口女人堂跡に到着、昔女人禁制だった高野山で女人結界線上に設けられた7つの女人堂の一つで、山内で修行する息子に会うためにはるばるやって来た母親や、信仰心から高野山を遥拝するためにやって来た女性達の堂だったという。この地点が高野山側の小辺路への入口基点となっている。ザックをデポして946mピークに登って見る。空海が八葉蓮華に見たてた山が一望できるというが、どの山が八葉蓮華を構成しているのかサッパリ判らない。高野山の神聖さを強調するために多いに脚色された結果の伝説としか思えない。

 
八葉蓮華の一葉か 

9:10 女人堂跡に戻って来た、靴が新品のせいで少し斜度のキツイ場所を登ると足が非常に痛い。靴紐の調整や山シャツを脱いだりと、ここで改めて出発の準備を整える。2~300m先に4人のハイカーが先行しているのが見える。彼らも小辺路を縦走するのだろうか。

9:20 女人堂を出発した、この旅を疲れてヘトヘトになり何のために歩いているのか解らないような旅にはしたく無い。無理をせず歩きを楽しみ、風景を楽しみ、歴史を感じながらの楽しい旅にしようと思う。

9:28 高野七口女人道の分岐点到着、道路標識が全て新しくなっており、世界遺産への登録を目指して古道の整備が進められているようだ。高野山を遠巻きに一周すると思われる高野七口女人道も、女性達がどう言う思いで歩いたのか、久しぶりに会える彼に心ウキウキと歩いたのか、息子の身を案じて不安な様子だったのか、信仰心強く無我の境地で歩いたのか、色々と想像しながら歩くのも楽しいかも知れない。いつか機会を作って歩いてみよう。

9:40 この辺り先日の雨で非常に道がぬかるみ、新しい靴の汚れが気にかかる。先ほど靴紐を調整した事で足の痛みはかなり楽になっている感じがする。道の右側に杉の木、左にツツジが群生しており、ツツジは葉っぱが芽吹き始め、まだ芽が硬いもの、かなり葉が伸びたもの等色々な段階があり、この晴天が続けば数日の内に葉が出揃い、花も開き始めるだろう。

9:55 薄峠に到着、女人堂からここ迄は関電の保全路にもなっており、道幅は車が一台通れるほどの緩い登りの尾根道で、歩き易い道であった。ここの道標ももちろん真新しい物となっている。

10:04 薄峠からの道は小さなブルドーザが入って整備をしている。道幅を広げたり崖側に手摺を付けたりしているようだ。先行したハイカーが此方へ引き返して来た。彼らは小辺路の下見に来ただけなのだろうか。挨拶を交わしただけで理由を聞く事はしなかったが、工事の人からこの先工事中で通行できないと言われ一瞬戸惑うが、長い間計画を練ったこの縦走を一箇所の道路工事位で断念する事は出来ない、取り敢えず工事現場迄行く事にする。

 
新緑の向こうに大滝の集落が見える 

10:09 工事区間を無事通過した。ブルの運ちゃんに確認すると、キャタピラの上を歩いて通ってくれと言う、そんなに大きな工事でも無いのに、先ほどのハイカー達は現場を見ずに引き返したようだ。高野山に来るだけでも何時間もかけただろうに、もっと確認すれば良かったのにと人事ながら残念に思った。自分は執念深く確認して物事に対処しよう。今薄峠を下っているが、この辺りはまだ工事が始まって無く、狭い道で水の流れた跡が有り、かなりぬかるんでいる。

10:17 沢を流れるセセラギの音がしてきた。山側には、お地蔵さんを彫刻した石の古い道標が立っている、そしてロープが張り巡らされて立ち入り禁止の標識がある。松林のようで、マッタケの取れる場所なのだろう。谷側4~500m向こうには大滝集落の屋根らしき物が光って見える。リスがスルスルと樹上に登って行った。リスはすばしっこいので今迄の山行でもあまり見た事がない。

10:35 大滝集落の一番の谷底(橋の上)に到着、ツツジが少し咲いている。これからはかなり急登が続くようだ。

10:41 大滝集落のキツイキツイ坂道をユックリと登っている。集落といっても今見えている家は廃屋となっている。こんな山奥で暮らすのは難しいのかも知れない。少し上にも青い屋根の家が見えているが、そこにも人が住んでいるのかどうか判らない。

10:45 大滝の分岐点に到着、野迫川村から本宮へという真新しい道標があり、反対側は高野龍神スカイラインをへて高野山となっている。

10:49 郵便配達人がバイクで通過した。人は住んでいるようだ。先ほど木工工場らしきものがあったので、そちらの方に配達に行ったのだろう。工場の表からは人の気配は覗えなかったが。

 
大滝集落のシャクナゲ 

10:54 選挙のポスター掲示板がある。やはり人は住んでいるのだ。掲示板から少し離れた所に数軒の家が有り、その庭先に見事な石楠花が咲いている。オーバーに言えば葡萄の房のように蕾が沢山付いている木があり、又ほぼ満開に近い木もある。こんな沢山の花を咲かせた石楠花の木は初めて見る。去年の奥駈縦走で玉置山で見た石楠花に感動したが、この大滝集落の石楠花はそれを遥かに越えている。里の石楠花だからこんなに沢山の花を着けるのだろうか。

11:05 大滝の集落を出発する。この集落を個人的に石楠花の里と命名した。

11:11 石楠花の木が畑に沢山植えられている。ここで栽培しているようだ、人の手が入るとここ迄花が咲くのかと改めて驚くとともに納得もした。

11:30 車のエンジン音が時々聞こえる。高野龍神スカイラインに近付いているようだ。静かな道だ。結局大滝集落は20軒に満たない集落だったようだ。家の前に立っている人皆に挨拶をしていったが、皆気持ち良く返してくれた。おおらかで静かで気持ちの優しい人達に思えた。

11:42 高野龍神スカイラインの出合に到着、ここで昼休憩にし、4~5m下のスカイラインを見下ろしながらラーメンをすすった。

12:16 スカイラインに入って歩き始める。車で通る時は道が有料となっているため高速道のような感覚で走っていたが、歩いて見ると片側一車線の極ありふれた道路で、整備も行き届いているとはいえない。

12:46 ここから高野龍神スカイラインを離れて、林道タイノ原線と平行に走る古道にはいる。ここには立派な「小辺路街道熊野古道」を説明する大きな略図が立てられている。

13:03 水ヶ峰集落跡に到着、家屋の跡は全く無い。道幅は2m以上あり車の轍が残っている所を見ると人が入っている事はわかる。大股まで7.6kmの標識がある。右足の捻挫が少し痛んできた。

13:17 林道タイノ原線に出た。この林道は舗装され道幅も広く徐行すれば車のすれ違いも可能だ。この歩行中に眠気をもようし、又喉も乾いて不思議な気分で歩いていたようだ。25,26,27日に夜行バスで東京ディズニーランドへ遊びに行った疲れが残っているのかも知れない。取り敢えずザックを下ろして休憩しよう。

13:32 林道タイノ原線入口を出発する。休憩中ポットの暖かいお茶を飲んだ、お茶をこんなに美味しく感じたのは始めてだ。茶葉を持って来るのを忘れたので、お茶を飲めるのは今日だけだ。

13:35 谷の向こうに大股の集落らしき物が見える、直線距離にして2km位だ。

13:52 緑と歴史のビューポイントと書かれた展望台がある。四方に山々は見えるが初めての場所なので、この道中の最大のピークである伯母子岳がどれかは確認出来ない。

14:15 林道タイノ原線から古道(側道)に入る。右足捻挫跡が又うずき出した。

14:21 再びタイノ原線に入る。古道部分はほんの僅かな距離だが、この先こんな事を繰り返すのかも知れない。

14:27 平辻に到着、左は大股迄2.9km、右は水ヶ峰・高野山方面の道標がある。一時間ちょっと前の道標では大股迄7.6kmだったので一般道ではかなりハイペースで歩いている事になる。ここからは又々古道にはいる。

 
左熊野道 文政二年のお地蔵さん 
 
 大股集落を流れる川

14:42 お地蔵さんの道標がある。古い物で字があまり良く読めない、「左熊野道文政年」、後は読めない。

14:46 又リスを見つけた、今日2匹目だ、デジカメで写真を撮って見たが葉の影になって写っているかどうか判らない。

14:53 タイノ原線に出る。この下に集落と車が見える。これが大股かも知れない。この辺りにあまり見た事のない木が沢山ある、写真を撮っておこう。この木の背景にある山が伯母子岳のようだ。

14:58 大股集落と思ったのはどうやら「ホテル野迫川」の様だ。ここから林道を離れて大股への古道に入る。

15:02 大股迄0.9kmの道標がある。下の方に集落が見える、今度は間違い無く大股の集落だろう。先ほどのホテルとは谷一筋違っている。

15:08 今日の目的地大股も直ぐそこにあり、慌てる事もない、膝も痛くなってきたので小休止する。

15:19 休憩を終わり出発する。

15:29 大股に到着。この集落も谷底にあり、山間にしては大きな川が流れていて水量もある。結構沢山の家が有るようだ。これからテントを張れる場所を探し、ジュースでも売っていないか探してみよう。

16:40 集落の川沿いを探して見たが、川の上流でマスの養殖をしており、大量に排水を川に流しているので川の水は飲む気がしない。川の側の道脇に車を2~3台置けそうなフラットな場所があるが、時々車が通るのでテントを張るのは少し気を使う、なにより川の流れの音がうるさ過ぎる。今この場所は道から10mほど高度を上げた古道上にある狭い広場だ、少し小石を取り除いて整地しテントを張った。水は下の道の100m先に公衆トイレが有りそこで補給出きる。今足を伸ばしてユックリしている。今日は無理をしないつもりで歩いたが、体力の衰えか少し疲れを感じ又足も痛い。もう少し先に進めば後が楽になるので、そうする事も考えたがやはり今の体力では無理をしてはいけないと思い自重した。

18:53 夕食を終えてユックリしている。今日は白御飯とドライフーズの八宝菜にした。始めて八宝菜を食べたが野菜類の戻りが悪く、あまり美味しいとは思えない。食後コーヒーをタップリと飲んだ、水の補給が楽なため水をふんだんに使えるのは有りがたい。寝るには少し速いが、衰えた体力を回復させるのは寝るのが手っ取り早い。

4月29日 火曜日 2日目

6:05 寝過ごしてしまった。アラームの設定が悪かったのか、川の水音が大きいので聞こえなかったのかも知れない。5時に目覚めこの時間に出発の準備が出来たのは動作の遅い自分にとって奇跡に近い。ポットにはお茶は無いが湯を沸かして入れた。そろそろトイレに到着する。そこで水の補給と用を済まして行こう。

6:15 トイレから再出発する。橋の上から釣人が3人程見える、鮎は解禁になっていないので岩魚か何かを釣っているのだろう。橋を渡ると集落の中をいきなりの急登だ。

6:22 大股集落の真上に出て来た。集落の家の数を数えると30件に満たない集落である。林業がダメないまどうやって生計を立てているのだろう。大きなマスの養殖場が2つあるが、集落全てがそれに依存しているとも思えない。家の軒先に石楠花が見えている、沢山の蕾を着けている。アスファルトの道は終わったが、まだまだ登りが続いている。この辺りは集落の墓地のようだ。伯母子岳山頂まで5.4kmの道標を見つけた。

6:26 靴の当りが悪く足首が非常に痛い。少し靴紐を緩めて見よう。

6:31 ゆるゆるに靴紐を緩めた。少し痛みは小さくなったような気がする。伯母子岳迄の登りの間はこれで良いが、下りは締めないと今度はつま先を痛めるかも知れない。まだまだ大股の川の水音が聞こえる。

6:41 高度は100m以上上げたと思うがいまだに川音が聞こえ、地道の急登が続いている。

6:56 急登の道が終わり、傾斜が少し緩くなってきた。ここ迄は何十回もの葛折の道で崖に這いつくばるように続いていたため、ずっと谷底の川が見えていた。

7:06 大股地区の7時の時報(ディズニーのテーマ曲)が聞こえてきた、こんな場所でこの曲を聞こうとは夢にも思わなかった。東京ディズニーランドには25,26,27日に夜行バスで遊びに行ってきたばかりだ。まだ大股地区から離れていないという事だろう。さらに小さな音だが川の流れの音も聞こえる。マス養殖場の数十本の放水管から3~4m下の川へ大量の水が落下していたので、たぶんその音かも知れない。道標が見えてきた。ここは萱小屋、大股迄1.4km、伯母子岳迄4.1km、とある。ただし小屋の跡らしき物は何もない。ここで少し休憩する。

7:15 萱小屋を出発する。檜峠には一時間程で到着するだろう、ここからは大股地区から離れて行く方向だ。

7:18 登り坂の角度が太陽に平行で正面に太陽があり非常に眩しい。道の石までが光って眩しい。後ろを振り返ると坂道に長い自分の影が映っている。太陽の正面に向かって歩く事は平坦道では経験の出来ない事だ。

7:28 伯母子岳らしき山が正面に見えている。あまり高さは感じない、もしかしたら本当の伯母子岳はこの山の後ろ側にあるのかも知れない。

7:37 本日始めての下りにさしかかり、一瞬涼しい風が吹いてきて気持ちよく感じたが、これも束の間の夢で直ぐに登りが見えてきた。

7:42 水場発見、水飲みで休憩しよう。

7:49 出発、トイレで補給した水を捨て、ここで新たに補給した。やはり気分の問題でトイレでの水を生で飲むのは抵抗がある。少し水を飲みすぎたかも知れない。伯母子岳が近くに見えているが、迂回するので時間的にはまだまだ相当掛かるのだろう。

8:10 桧峠に到着、伯母子岳山頂迄1.9km、大股迄3.5kmになっている。先ほど見た道標の“檜”と今回の道標の“桧”が違っている。なにか意味があるのだろうか。少し休憩をする。

8:20 桧峠を出発した、小辺路道の伯母子峠は伯母子岳を左に巻いてピークを通らない、どう言う経路でピークを踏むか少し悩ましい。

8:25 伯母子岳が見えて来た、先ほどから伯母子岳と思っていた山の裏側にあった。天気は良いが少し霞んでいる様だ、取り敢えず写真を撮ってみた。

8:30 又水場発見、水の量はかなり多い、先ほど飲みすぎたのでこのまま通過する。

8:46 分岐路に到着。道標は山小屋迄1km、伯母子岳山頂迄0.6km、又護摩壇山迄12.7kmとなっている。どちらの道も山の道とは思えないほど広い。直接伯母子岳ピークを踏むか、山小屋迄行ってそこにザックをデポしてピークを踏むか迷うところだ。地図を見て検討してみよう。

8:54 1/25000の地形図と現状の道がどうも食い違い判断が難しい。地形図では護摩壇山の分岐は伯母子岳ピークになっているが、この分岐点の道標では右への道が護摩壇山となっており、道も広くて最近出来た物とは思えない。

8:56 分岐点を伯母子岳に向かって出発した。ピークを踏んで伯母子峠に下る事にした。

9:17 伯母子岳山頂に到着。2m程度の広い道がほぼ直線で山頂迄続き、勾配もそんなにキツクなく以外に簡単に登れた。植生は高見山の大峠から登る時にある霧氷を付けるあまり高くない木と同じようだ。葉の芽は弾けそうだがもう少しというところだ。山頂は四方八方が開け展望の良い山だ。

9:27 弥山の方面と、玉置山の方面の写真を撮った。弥山方面は霞んでおり、弥山や釈迦、大日岳が漸く区別がつく程度だ、玉置山方面はどれが玉置山なのか判らず、地図の方角からソレらしき場所を狙ってみた。

 
伯母子峠の小屋 
 
 落ち葉の回廊

9:39 山頂を出発した。お茶を飲んだりお菓子を食べたりで、ゆったりした気持ちで過ごした。今は飴を舐めながらの峠小屋に向かっての下山だ。

9:51 伯母子峠山小屋に到着。ここに沢山の道標が立っている。山頂迄15分、十津川村三田谷迄12km、野迫川村大股迄7kmとなっている。山小屋の中を覗いて見よう。

9:59 小屋の中に三田谷側5分で水場が有るとの案内がある。小屋は詰めたら10人は泊まれそうな立派な小屋で、感想ノートも置いてある。十津川村三田谷方面に向かって出発する。

10:06 水場があったが流れがチョロチョロで、道を這っているので水場とは言えない場所だ。

10:08 今度は水量の多い水場を発見、小屋の案内はこれを指しているのかも知れない。

10:09 又も水場発見、水量も多い、この辺りは水が豊富で全く水の心配をしなくてよいようだ。

10:13 又水をタップリと飲んでしまった。腹を揺すると音がするほどだ。出発する。

10:27 カサカサと落ち葉の靴音がする。静かで、道が広く一面に去年の落ち葉が堆積している。小辺路を歩く人もハイカーも少ないのか今日はまだ誰にも会っていない。道の両側には若葉が半分程度吹き出したブナ等が続いている。

10:33 下りが続き足のつま先が痛くなってきた。少し靴紐を調整してみよう。

10:36 出発する。ちょっときつめにし過ぎたかも知れない。

11:12 道が崖崩れで寸断され、ブッシュを高巻いての悪戦苦闘でやっと反対側の道に降りてきた。この間30分位のロスがあった。少し汗をかいたので休憩しよう。

11:18 崖崩れの迂回地点から出発する。迂回路の整備をキチンとやらないと結構危険な迂回路となっている。(荷造り用の紐で方向案内しているだけで道というものは無い)カメラもボイスレコーダもザックに入れて万全をきしたが、縦走用の重いザックはバランスが取り難く危険を感じた。これからは先ほどと同様穏やかな下り道が続くようだ。

 
旅籠・上西家跡の白い花 

11:21 旅篭、上西家跡に到着。大きな石垣がありかなり広い敷地の旅篭であった事を覗わせるが、家の跡は何もない。庭の跡地の大きな木にあまり見かけない白い花が咲いている。青空を背景に清楚な佇まいだ。

11:23 白い花を写真に取って出発する。

11:30 この辺りはトラバース状の道で人があまり歩いていないのか、道が狭く崖側に傾斜していて歩き難い。小辺路道の中でも特別な場所なのかも知れない。

11:34 鬱蒼とした杉の植林地帯だ、今日は天気が良いので暗く感じないが、これが曇天なら気味が悪いほどの暗さになるのではないかと思われる。道には沢山の杉の落ち葉があり、それがクッションの役割をして歩き易い。こんな道が少し続くようだ。

11:42 杉の木の背丈が低くなってきた、落ち葉も無くなってきたと思ったら、植生が檜に変わったようだ。

11:48 水場発見、大量に水が流れている。ここで昼食にする。

12:32 出発した。水場の側でラーメンを炊いたので水を入れ過ぎ薄味のラーメンだったが、水の心配が無いのは楽だ。ついでに湯を沸かしてポットも満タンにし、水もポリ容器全て満タンにした。これで明日の夕食迄は水の心配をしなくて良い。

12:49 三田谷・五百瀬(いもせ)1時間30分、伯母子峠2時間30分の道標がある。ここに弘法大師(はっきりとは読めない)と書かれたお地蔵さんが祭られている。

12:51 また杉の植林地帯が始まった。背丈は先ほどの檜の倍程もあり、杉の葉が絨毯のようにクッションとなり快適な歩きを楽しんでいる。

13:32 長い長いトラバースの下り坂だ、相変わらずの杉の植林帯を歩いている。三田谷迄後1時間は掛かりそうだ。今アオダイショウを見つけて写真を撮った。捻挫の痛みは無いが新しい靴の当りの悪さによる痛みが続いている。靴紐を種々調整してみるがあまり効果は表れない。

13:35 五百瀬川が谷底2km位先に見えてきた、かなり広い川のようだ。集落らしき物は何も見えない。

13:39 水を見つけたので休憩をする、足の痛みがひどいため靴を脱いでチェックしよう。

13:47 セセラギの音しか聞こえない静かな山中だ。セセラギといっても涌き出た清水が少し集まっただけの小さな流れだ、この流れが目の前で急激に谷間に流れ落ちて行く。音といえば他にシーンと言う微かな音が聞こえるが、これはただの耳鳴りだろうか。普段騒音の中にいると感じないが、耳鳴りである事は間違いない、風もない事だし。今靴下も脱いで裸足になっているが、足は少し楽になってきたような気がする。長距離縦走に買ったばかりの靴を履いたのは間違いだったかも知れない。この山旅は休憩ばかりしているようだ、最近の山行で体力の衰えを感じ始め、今回は疲れた・バテタを言わなくて済むよう体に気を使っている。

13:53 長い休憩を終えて出発する。靴を履くと足はまだ痛い。今度は休憩無しに五百瀬迄行きたいものだ。

14:04 パッと視界が開けたら目の前に集落がある、ここは何処なのだろう。お地蔵さんが立っていて「みぎこうや、ひだりせいの原」と書いている。どうやらここは三田谷のようだ。時間的に速く感じて三田谷はまだまだ先の事だと思っていた。

14:10 三田谷橋を渡っている。集落といってもこの辺りには4~5軒の家しかない。

 
幼子の声援に励まされる 

14:23 五百瀬の集落を通過中だ。自動販売機がありジュースを飲んだ。五百瀬は大きな集落で学校もあるようだ。今日は17時過ぎ迄、歩けるだけ歩こうと考えている。水の心配をしなくても良いのでそこでキャンプをしようと考えている。今五百瀬バス停を通過した、こんなところ迄バスが通っているのだ。腰抜田という標識が立っている、内容は大塔の宮護良親王にまつわる伝説であり、文章が少し長いので写真に撮った。

14:36 長い頑丈な釣橋、船渡橋を渡って五百瀬の集落を離れようとしている。橋の手前にはテニスコートやプール等があり五百瀬小学校の施設のようである。施設の隣には見事な藤が彩りを添えていた。これから三浦峠に向かう。「いまからがんばれ、いもせ小学校」と手書きのメッセージ標識が向かえてくれた。

14:48 今日始めて畑で野良仕事をしている人に会った、声を掛けると、お手伝いをしている小さな子供もこんにちはと気持ち良く返してくれた。三浦峠迄3時間の道標が先ほどあったが、17時過ぎに平地を見つけたらテントを張るつもりだ、今日出きるだけ距離を稼いで明日には熊野本宮に辿りつきたい。

15:32 まだ登りが続いているが、霧雨のような小さな雨が落ちてきた。今の所テントを張れるような平地は全く見かけない。17時過ぎ迄この小雨で続いてくれたら良いが、カッパを着るほどの雨になるとうっとうしくて歩く気力がなくなりそうだ。

15:44 小屋が見える避難小屋だと良いのだが。

15:46 廃屋だ、ビールの箱などが散らばっているのを見ると、少し前まで人が住んでいたような気配だ。少し汚くてここに泊まろうという気にはなれない。もう少し前進してみよう。

15:51 何とかテントを一張り出来そうなスペースを見つけた。雨も心ばかり強くなったような気がする。取り敢えずここにザックをデポしてもっと条件の良い場所を探してみよう。靴による足の痛みは登りになってなくなったが、右足の捻挫跡は少し痛む。第二候補発見、スペースは少し狭いが平坦度は此方の方が良いようだ。第二候補を少し整地して見た、道の真中で出入り口が崖側から30cmしかなく、夜中に寝ぼけてしまうと少し危険だがここに決定する。

16:26 今テントの設営が終わった。17時位迄歩こうと思っていたが、雨も降ってきたし、急峻な峠道なので今度何時テントを張れるような場所が見つかるか判らない、疲れも出てきたし、丁度良いタイミングだったかも知れない。テントにはポタポタと雨の音が聞こえる。夕食にするには少し速過ぎる、取り敢えずユッタリとしてそれから考える事にしよう。

18:16 夕食を終え、ユッタリとした気持ちでラジオを聞きながら、お菓子を食べコーヒーを飲んだ。山で飲むコーヒーは何時も感じる事だが、インスタントコーヒーであっても喫茶店で飲むコーヒーより遥かに美味しく感じる、体が疲れていたり、山中の貧しい食生活がそう感じさせるのかも知れない。恐れていた雨は少し遠のいた様で、今はテントを張る前より雨は小さい。しかし一寸風が強くなって来たようだ。ラジオの天気予報では明日は強風注意報や雨を予報している。明日は雨の行軍を覚悟しよう。

18:21 ボイスレコーダのアラームテストをして異常の無い事を確認した。ここは大股と違って静かな場所なので明日は4時に起きる事が出きるだろう。

4月30日 水曜日 3日目

:02 凄い風の強さだ、一晩中強風が吹き荒れていたような気がする。寝た時間が早過ぎた事と強い風の音で何度も何度も目をさまし、夜が明けるのを今か今かと待っているような状態だった。雨はほんの少し降る程度で今の所カッパの必要は無いようだ。朝食を速めに済まして出発しよう。

5:20 テントを撤収する頃から雨が降りだし、カッパを着込んでの出発だ。周りはまだ薄ぐらい。雨はそんなに強くはないのでこれを維持してくれるか、曇にでもなってと願う、というのもズボンだけカッパがゴアではないので、あまり強く雨に打たれると濡れるのではないかと心配だ。ゴアのズボンは3月9日の弥山での滑落で破れてしまい、新しいカッパを買う余裕が無い。

5:26 三浦・五百瀬・西中と書かれた新しい道標の側に、ひっそりとお地蔵さん一体と古い石の道標がある。みぎこうや後はヘッドランプで照らしても読めない。お地蔵さんの表情も暗くて見えない。

6:05 三浦峠ピークに到着、三田谷まで4.7kmの道標がある。五百瀬からの約4kmがずっと登り坂で、昨日五百瀬辺りで一泊していたら、三浦峠越えだけでばててしまうかも知れない。雨は強くなりカッパの帽子で雨を遮ってボイスレコーダに記録している。山頂には大きな林道が通っており、車がここ迄入れる様だ。立派なトイレも有る。西中をへて十津川温泉に至る、西中まで11.2kmの道標がある。

6:16 山頂からここ迄、「植物を獣害から守るため」として道の両側を柵で囲って動物が入れないようにしているが、崖に面した所は柵の無い所もあり、これで動物の食害から守れるのであろうか。

6:22 水場発見、大量に水が流れている。竹の樋があるので水が汲み易くなっているが、荷物が重くなるので補給はしない。

6:30 古矢倉跡に到着、立て札のみで何も無い。雨がどしゃ降りだ先を急ごう。

6:47 新道と古道の分岐点に到着、どちらも西中を経て熊野となっているが、右と左全く反対の方向になっている。取り敢えず新道を進む事にする。

7:28 ここにも水場がある。雨で増水したのか水量が多い。雨は一時に比べて少し小降りになった。緩い下りのトラバースの道で歩き易く、かなりのハイペースで歩いている。一部トラバース特有の崖崩れ部分があったが、ロープを張っていてそれを頼りに通過した。新道と古道の分岐点より道標が現れないのが少し心配だ。中間に道標の無い分岐点があり、これを大きい道を選んで進んだが、道はこれで良いのだろうか。

7:48 林道終点に出たが道標も何も無い。雨は小降りだ。谷の向こうの山にはガスが湧き上がっているのが見える。道の側には雨に濡れたツツジがしっとりと咲いている。道が不安だが取り敢えず林道を下って見よう。

7:51 熊野古道の道標を見つけた。一安心だ。林道から古道にはいる。

8:00 こんな山奥に民家が一軒ぽつんと建っている。生活の跡が見えるので人は住んでいるようだ。凄い山奥でどんな生活をしているのだろうか。

8:09 新道と古道及び舗装された林道の合流点に出た。林道の登り側50mの所で階段を下り、古道に入る道があるようだ。雨は小降りだがずっと降り続いている。この辺りの道標は距離数でなく時間表示をしているものが多く距離的にどの位なのかの判断がつかない。雨でザックから地図を取り出すのも億劫で道標だけが頼りで歩いている。

8:15 再び林道にでたが、道標が見当たらずどちらに進めば良いか判らない、道標がないか辺りを探して見よう。

8:19 西中の集落に出たようだ。国道425号線の標識が見え、そこに十津川村西中の地名が読める。ジュースの自販機がある。雨であまり喉は乾いていないが甘味が欲しい。

8:35 古道のガイド本は西中で一旦終わって、次は十津川温泉から始まっている。この間は国道で歩く意味が無いと解釈したようだ。自分は一気通関で歩く事を目的にしているので、この間約8kmの国道歩きに挑戦だ。

8:55 立派な公衆便所がある。ここで休憩し、地図で十津川温泉からの古道の入り口を確認しよう。雨に濡れた体は動きを止めると寒さがこたえる。便所の前に神社がある、川合神社だ。木の古い鳥居が立っていて、建物も古さを覗わせる。

9:10 昴の郷より少し向こうに柳本があり、そこから果無峠越えの小辺路道に入るようだ。ここで水を満タンに補給した。国道歩きは余り楽しいものではないが出かけよう。

10:04 雨が止んだ。太陽もちらりとのぞいている。アスファルトの国道を歩くのはやはり辛い。既に5km近く歩いたと思う。昴の郷は温泉とかレストラン等の施設を持っているようだ。ここに立ち寄って久しぶりに普通の食事をしようかなとも思っている。この国道は右手に西川を見ながら延々と続いている。各山々は少しガスがかかり、しっとりと濡れて緑が映え非常にきれいだ。カメラはまだザックの中でカッパやザックが濡れているので取り出す気にはなれない。今軽トラの運ちゃんが乗りませんかと親切に声をかけてくれた、気持ちは嬉しかったがカッパもザックも濡れているし、なりより自分自身の足で最後迄歩きたい気持ちが強く、丁寧にお断りした。

10:40 昴の郷に到着、ホテル・温泉プール保養所等の看板が上がっている。ここで食事をして休憩をすると、気力が萎えこれからの行動に差し障りそうだ。地図を確認し先の行程も含めて考えて見よう。

10:45 食事を止めて出発する。新西川トンネルに入らずに右側の小さなトンネルに入れば柳本に行けそうだ。そこから古道に入る道があるようだが、そこまで行って本宮に今日中に着けるものか検討してみよう。

10:55 100m近くの長い吊橋を渡った。少し安定が悪く古い物であまり人は通らない橋のようだ。そろそろカメラをザックから取り出し、写真を撮ってみよう。

11:02 ここから4時間30分のコースタイムで本宮の八木尾に着き、大社までは更に国道を5~6km歩くようだ。昼には速いが少し疲れもあるのでここでラーメンでも食べる事にする。

11:47 柳本の吊橋から果無峠に向かって出発する。

12:03 果無峠の登り口が判らない。地図も道標も不親切だ。近くを歩き回って道標を探してみよう。

12:05 道標を見つけた。果無峠3時間、七色・八木尾に至るとなっている。急な階段の登り口だ。

12:16 チョト登っただけで大汗をかいた。あまりにも暑いのでカッパの上を脱いだが、下は脱ぐとザックのパッドに染み込んだ水で濡れるため脱げない。こんな状態で今日中に本宮に着くのだろうか。

12:20 古い石畳の熊野古道独特の道だが滑って歩き難い、なるべく石に乗らないように歩いている。昼食後非常に疲れる、今日は本宮に着けないかも知れない。

 
良い匂いの花 

12:36 かなり高度を上げているが、こんな山の上に集落がある。家の数はそんなに多くはないが、登り口にあった林道が接がっており車で移動出きるようだ。

12:38 何とも言えない良い匂いの花がある。真白で袋状の花びらになっている。名前は判らないが写真に撮った。

12:50 車道に出た。アスファルトではなくコンクリート作りの3~4m幅の道だ。登りがきつかったのでかなり疲れそして暑い。

12:54 果無峠登山口に到着、果無峠160分、七色八木尾に至る。反対側は十津川温泉40分になっている。ここで少し休憩をする。又雨が落ち始めた。

13:09 休憩の間に雨が降ったり止んだりしたので、カメラをザックに仕舞おうかとも考えたが今は雨が止んでいるので、仕舞わずに出発する。

13:12 馬頭観音菩薩のお地蔵さんがある。側には終わりかかった石楠花の花が咲いている、最盛期には沢山の花を着けていたようだ。

13:27 先ほどから4番目の地蔵さんがある。第26番千手観世音菩薩と書いている。30番から始まる石仏の26番目のようだ。

13:36 第25番千手千眼観世音菩薩を通過。この25番を過ぎると下りに指しかかる。天水田の立て札が有る。この山の上に田んぼがあったのであろう、周囲を眺めると畑の跡らしく感じられる。

 
ガスの古道 

13:53 熊野古道独特の杉林の道だ、いま写真に撮ったがこのカメラは明るく映るので2ノッチ程暗く補正してみた。25番から石仏が見えないが歯抜けでも有るのだろうか、それとも見過ごしたか。

13:56 杉林が開けて展望の良い場所に出たので写真を撮って見た。山の名前はわからない。

14:02 第22番石仏が有った、23,24番は見過ごしたようだ。これも千手千眼観世音菩薩だ。

14:12 第21番石仏通過。

14:20 立派なお堂が建っている。小屋があり、水も引き入れている。小屋は避難小屋ではなく、どんな用途か判らない。小屋の裏側には5部咲きの石楠花の花が有る。少し休憩をして行こう。

14:25 休憩をしていると非常に寒い。このお堂の側に第20番目の石仏がある。道標も立っており、果無峠迄30分となっている。

14:46 古道歩きで初日以来久しぶりに3人パーティーの女性ハイカーに会った。彼女らも人に会う事が無かった様で、何処から何処に行くのかとか、何処に泊まるのかとか人懐かしげに聞かれた。

14:52 第18番石仏、如意輪観世音菩薩通過する。

14:57 少しガスの掛かった杉林の写真を撮って見た。先ほどの道標から既に30分は経過しているが、まだ果無峠ピークには達していない。歩くペースがだいぶ落ちているようだ。

15:02 やっと果無峠ピーク1114mに到着。ここに第17番石仏が建っている。非常に寒い、石仏の写真を撮るのみで通過する。

15:11 第16番石仏を通過する。字が消えかかり殆ど読めない。

15:21 第15番十一面観世音菩薩。下りは汗をかかず少し寒さを感じる。カッパを着込む事にした。長い間水分も取っていないのでお茶タイムにしよう。

15:32 第15番石仏を出発する。ザックを降ろす時に右手につけた水晶の数珠形のブレスレッドを飛ばしてしまい、必死で探した。結局ザックとザックカバーの間に挟まっていたのを見つけた。この数珠は去年山上ヶ岳に撮影に行った時知り合った行者さんに貰ったもので、山に入る回数が多く危険もあるだろうから、この数珠をお守りとして使ってくれと言われてもらったもので大事にしている。

 
新緑の向こうに熊野川 

15:46 第14番、如意輪観世音菩薩を通過する。

15:58 遥かに遠いが熊野川が見えて来た。遠めに見る川は幾分濁って見える、朝方の雨が影響しているのかも知れない。

16:04 本宮町を望むという展望所で本宮方面の写真を撮った。

16:13 第10番千手観世音菩薩を通過する。何時の間に10番まで進んだのだろう。

16:20 熊野古道八木尾と七色の分岐点に出た、七色迄20分となっているが、八木尾の時間表示は無い。

16:36 第3番石仏、字が消えかかり読めない。先ほどからいやに速く石仏の順番が進むがどうなっているのだろう。

16:46 一気に高度を下げているが、なかなか熊野川は近付いてこない。5時までに八木尾に到着したいと思っている。八木尾に近付き、焦っているのか非常に暑く感じ疲れも出て来た。幸いテーブルを置いた休憩所がある。ここでカッパを脱ぎ少し休憩をしていこう。この地点で焦っても仕方がない。

16:56 ザックカバーも外した。歩きを止めてカッパを脱ぐと結構寒い。ポットの湯もここで飲み尽くした。ただのお湯でも温かいだけで水より格段に美味しく感じ気分が休まる。

17:09 国道168号線八木尾に到着した。地図を見ないと大社方面がどちらか方向が判らない。

17:16 本宮大社に向けて出発した。大社までは約5kmの国道歩きになるが、去年泊まった“わくわくの郷キャンプ村”の位置がいまいち掴めていない。できればそこでキャンプをしようと思っている。19時までに着ければ良いが。

17:18 民宿まつみやの看板が見える。900m程先の萩地区に有るようだ。一寸触手が動く。前を通りかかった時に考えてみよう。

17:27 168号線を大社方面に向かっているのに、ここにも果無山登山口がある。本宮の地理を把握していないので訳が解らない。

19:33 今食事を終えてユッタリとした気分でテレビを見ている。結局民宿「まつみや」に泊まる事にした。今日焦って大社に辿りついても大阪に帰る事は出来ないのでこれで良かったと思う。名古屋のさんに無事本宮に到着した事を連絡したら、5月3日の大峰山山開きに行こうと誘われ、行く事にし2日午前9時に黒滝での待ち合わせを約束した。明日は速めに帰って洗濯しないと着る物が無い。大社にお参りを済ませて直ぐに帰ろう。ユッタリとした気持ちでもまだザックを背負っているような感覚が残り、肩が重く感じる。この民宿は操業115年でお婆さんが三代目という事だ、お客さんの多い時はお手伝いさんを頼んでいるようだが、今日は私一人で他に客はいないのでお婆さん独りだ。昔の大きな家で通された所は15畳程もある大きな部屋で柱も太く、立派な欄間があり、鯉が昇る掛け軸、また置物も数体が黒光りして存在感を示している。今日は早寝をして三日間の疲れを癒そう。

21:13 暑くて、咽が乾き起きてしまった。飲めないビールを飲んだのが間違いのようだ。

5月1日 木曜日 4日目

6:00 民宿まつみやを出発した。お婆さんの勧めでNHK朝ドラの「ほんまもん」ロケ地がある伏拝王子から中辺路に入り大社迄歩く事にした。

6:12 伏拝王子20分の道標を見つけた。たぶんお婆さんの言っていた道だろう。

6:31 伏拝王子の近くから果無山方面の写真を撮った。右前方からの太陽の光で眩しいが、四方どちらを向いてものどかな気持ちの良い景色だ。

6:35 ドラマ「ほんまもん」の野辺送りのシーンを撮影した福寿院だ、前方には果無山が見えほんとうにのどかな場所だ。

6:53 伏拝王子に到着、ユックリとあちこちを見ながら歩いたので時間がかかってしまった。伏拝王子は本宮大社に4kmの地点にあり、旧社地「大斎原」(おおゆのはら)が望まれるため、熊野本宮遥拝所としての性格を有し、和泉式部がこの地で月の障りで参詣できず、本宮大社を伏し拝み「晴れやらぬ身の浮雲のたなびきて月の障りとなるぞかなしき」と詠んだところ、その夜に熊野の神が夢に現れ「もろともに塵にまじわる神なれば月の障りも何かくるしき」とのお告げがあり、喜んで参詣したとある。これは熊野権現が何事も心広く受け入れる神である事例として…省略して要旨を抜粋したが、上記の長い王子社跡の説明立て札がある。

 
中辺路の熊野古道 

7:00 伏拝王子を祓戸王子(はらいど)に向け出発する。

7:20 三軒茶屋跡に到着、ここは果無峠越え小辺路と中辺路の分岐点であった様だ。側には九鬼関所跡もある。4~5m下には舗装道も有り、古道の要所を車で見物する人達もありそうだ。

7:34 三軒茶屋跡を出発する。民宿のお婆さんに貰ったミカンを2個食べた、柑橘類はあまり好きで無く断ったが、これは美味しいからと無理に押し付けられたものだが、本当に美味しかった。ミカンに対する認識を変えなければならない。昨日迄は目的地到達のための歩く事だけを考えていたが、今日の歩きの何とのんびりとした事か。ただ靴による足の痛みはいぜんとして続いている。

7:43 高木の杉林に囲まれた熊野古道そのイメージのままの場所を歩いている。耳鳴りがするほどの静けさだ、何の音も聞こえてこない。耳の中でただシーンと鳴っているだけだ。この静寂の中で何も考えずに歩く事は大きな心のリフレッシュになるような気がする。

7:52 「一寸寄り道コース」という紀州わらじの会の道標がある。朝夕の見晴らしが良いそうだ、立ち寄ってみよう。

7:57 展望台が作られており、和歌山県、朝陽/夕陽百選の立て札がある。大塔山系に沈む夕陽の美しさが百選に入っているようだ。本宮大社の大鳥居も見えている。

8:15 祓戸王子に到着。この標識では祓殿王子となっている。薄峠や檜峠でも前の道標と現場の表示が違っていたが、結構あちこちで二通りの表記が定着しているようだ。

8:19 本宮大社に到着、祓戸王子からの大社入口は鬱蒼とした大木の杉林となっている。早朝のせいかまだ参詣者はちらほらしかいない。社殿入口前に山用のガスコンロや炊事用の鍋などを積み込んだ車が数台駐車していて、なぜこんな所にこんな車がの疑問は社殿の門をくぐると直ぐにわかった。社殿の玉砂利を敷き詰めた参拝所一杯にレールを敷き、撮影カメラを載せた台車が撮影の準備をしている。映画用かテレビ用か不明だがディレクターから台車の操作係り、モニタのチェック、カメラマン等総勢7~8人の大掛かりな撮影チームである。出演者等が確認できないところをみると、本宮大社自身を撮影するのが目的かも知れない。台車から伸びたアームの高さ5,6m以上の上部から社殿を狙っている。こんな状態では参拝もままならず、しばらく撮影の見学をして大社を後にした。

  体に気を使った今回の山旅は、意気込まず自然体で楽しく歩けたような気がする。体力の不安も解消し少し自信を回復した。ペンタックス67に換えてデジカメを持ち、ザックの重量を5kg以上押さえたのが功を奏したようだ。長距離縦走は体に負担をかけない事が楽しく歩けるコツの一つだ。今回失敗したと思われる事は、買ったばかりの靴を履いた事だ。高野山でバスを降り5分も経たない内に足の痛みを覚え、以後今日までずっと悩まされ続けた。古い靴の底が磨耗し、旅の途中でスリップなどしたくないと思う気持ちが裏目に出てしまった。さあ次は何処に挑戦しようか。

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