釈迦ヶ岳・小笹の宿・阿弥陀が森

 Home Back

6月6日

  五日の木曜日の朝会で金曜日が臨時休業日である事を知り気持ちが焦る。3連休とは思ってもいなかったので、漠然と土日には三週連続の釈迦ヶ岳で白ヤシオを撮る事位しか予定を立てていない。今日帰宅後直ぐにでも何処かに行ける予定を急遽立てる必要がある。そう思いながらも、仕事中に簡単に予定を立てるわけにもいかない。返りのミーティング終了後に少しアイデアが出た、釈迦ヶ岳の白ヤシオは今回が最後のチャンスだと思うので是非予定に入れるとして、釈迦からザックを背負ってでは3連休が有効活用出来ない、そこで釈迦を一旦降りて車で移動して、山上ヶ岳に向かう事にした。小笹の宿には奥駈縦走の朝露に感動した思い出がある。

  帰宅後急いで山行の準備をし、21時に自宅を出発して釈迦ヶ岳の峠の登山口を目指す。旭林道のかなり登った所だが、続けて4頭の鹿を発見する。テリトリーがあると思うのだが、これだけ近い場所に4頭を目撃したのは彼らが群れの一部なのか、通常夜は一頭で行動するものと思っていたのに。24時峠の登山口に到着。大型ダンプが六台程、登山口広場を占領している、この場でダンプを見るのは始めてだ、いつもはしまっている林道のゲートが開いているので何か工事でも行われているのかも知れない。邪魔にならない様に駐車場を確保して就寝に入る。

 
孤高のシロヤシオ 

6月7日

  5時起床。パンとコーヒーで鳥が囀るなかゆっくりと朝食をとり準備をする。今日は撮影が主体のため、ザックはカメラ専用ザックとしたので、ガスコンロやコッヘルは持って行けない。撮影機材以外は昼食用のパンとカッパそれと水が1リットルの必要最小限に押さえた。

  3週連続の釈迦ヶ岳への撮影山行となるが、新緑の美しさは相変わらずで飽きる事がない。期待した白ヤシオは千丈平近くでは満開に近かったが、やはり花を付けている木は少ない。釈迦ヶ岳頂上付近では既に花が散りかけていて、残った花も色あせて見える。朝方はガスが有り風さえ無ければ絶好の撮影日和で有ったが、風が強くなかなかシャッターを切るチャンスがない。

  期待したほどの撮影成果もなく下山し168号線の坂本から天川に向かう。途中洞川のゴロゴロ水を補給して、五番関トンネル口広場に駐車した。本日はここで車中泊だ。夕方7時頃迄何処からとなく、ほら貝の音が聞こえる、練習でもしている様な感じだ。このころにはやる事もなく就寝に入るがあまり良い寝つきではない。藪の中で何故か子猫の泣声が聞こえる。また車の下でごそごそと何やら動物の動く音がする。

6月8日

  5時起床。昨日の車の下でごそごそ動いていたのはやはり子猫だった。こんな山の中に捨てられた子猫は生きていけるのだろうか。結構人なれして近づいてくるが何ともしてやれない。6時に準備が完了して今日の宿泊地小笹の宿を目指して出発する。五番関の女人結界門迄は杉林だが、ここからは広葉樹の林が続き、清浄大橋から登る山上ヶ岳より趣があり好きだ。1個所ロープの掛かった難所があるが、本日何本掛かっているのか数えると4本連続で最長のロープは10m程であった。殆どが2本掛けになっているので安全をはかって二本のロープを同時に掴んで登った。

 
 山上ヶ岳、西の覗での修行中の修験者

  大峯山の開山中の登山は今回が始めてで、しかも本日は土曜日とあって、沢山の山伏姿の修験者?が歩くのを目撃し、またほら貝があちこちで吹き鳴らされている。大峯山系で山上ヶ岳周辺の登山者の挨拶がどうも馴染めない「ようお参り」という完全に大峯山寺の参拝者に対する挨拶になっていて、一般の登山者もこの挨拶をしているようだが、私は「こんにちは」で通すつもりだ。中には山伏姿の人も「こんにちは」で返してくれる人もいて安心した。

  洞辻茶屋では店の主人の人付き合いのよさに、ズルズルと長居をして話し込み、大峯山系に見せられて殆ど毎週何処かの山に登っている事や、最近では奥駈道を吉野から本宮、さらに本宮から那智まで縦走した事等をはなした。二十歳程度の山伏姿のりりしい若者が子供を捜して降りて来た。山上から姿が見えなくなり、一人で降りたのではないかと探している様だ。何人かの登山者が子供を目撃したとの事で、遭難等の事故では無さそうだ。

  大峯山寺では始めてお参りをし、賽銭も入れた。信仰心はないが大勢の人がやっていると、ついつい同じ様にしなければ悪いような気持ちになってしまう。これは典型的な日本人の性格だ。しかし信仰心を持てる人は常々羨ましいと感じている、何かにすがれる気持ちが有れば、もっと楽に人生が送られる様な気がする。自分の周りで発生する事が全て自分の所為で、自分の責任で対処しなければと考えると、やはりきつい事もある。信仰心はこの時の精神的な逃げ道を作ってくれるのではないだろうか。

  寺や宿坊にはあんなに沢山の人が来ているのに、山上ヶ岳のお花畑には以外に人は少ない。登りの洞辻茶屋で出会った精神障害を持った幼子を伴った人が、重たそうな荷物ですねと声を掛けてくれたが、重い宿命を背負った親子の事を少し考えていて、喉が詰まって声が出ない、どう切り出して良いのか判らず、挨拶をしただけでその場を通り過ぎた、何か話せば深刻な話をしてしまいそうで、その人の思いとは違う方向へ行くような気がして。

  日本岩は少し白っぽい空だが天気も良しまあまあの展望だ、双眼鏡を覗くと清浄大橋の駐車場には大型バスだけでも14台が駐車しているのが見える。開山中の大峰山時には沢山の人が訪れるのが実感できる。ここで昼食を済まし、小笹の宿へと向かう。

 
可憐なイワカガミが咲いている 
 
 純白のシロヤシオ

  山上ヶ岳から小笹の宿へは、奥駈道としては結構道幅が広く、穏やかなアップダウンの続く道で歩き易い。雪のシーズンに来た時このコースでスノーシューを履いて歩けば面白いかもと思った事がある。山頂のにぎわいを別にこの辺りは静寂を保っており、新緑を楽しみながらの40分で小笹の宿へ到着した。

  小屋には誰もいない、小屋に泊まるのも良いが、夜中にふと目覚めた時に違和感を感じないテントの方が自分には向いている。そう思うとテマでもついついテントを張ってしまう。テント生活になれ、これが快適に感じる自分は、最早完全な山男になりきってしまったようだ。夕食にはまだ時間が早いため、明日の撮影の下見に阿弥陀が森迄、森林浴を楽しみながらの偵察を行った。意外や白ヤシオが点在している。ここの白ヤシオは高木に光を遮断されているせいか、花の白さが釈迦ヶ岳のとは違うように感じる。純白で清楚な感じがより強調されている。明日の撮影が楽しみだ。

  夜中には少し風が出て来た、パラパラとテントに雨の落ちる音もする。不連続な音なのでもしかしたら、木についた露が風で飛んできているのかもしれない。ガスが有って風がない、そんな天気を期待しながら浅い眠りのなかで朝を迎える。

6月9日

  4時起床。やはり少し雨が降ったようだ。テントはズッシリと水分を含み、周りの木や草も濡れている。風は強いが雨は降っていない、期待通りガスだけはかかっているが、撮影としては難しそうだ。絞り22にするとシャッター速度が1秒を越える、この風の中では到底撮れそうにもなく、風の少ない場所、吹かないチャンスを待って白ヤシオの撮影をする。結局満足のいく写真は一枚も撮れず、また当初期待のガスの逆光に浮かぶ露の花も見る事が出来なかった。やはり露の花は木の枝に葉が付いてしまえばダメなようだ。

  3時間程で撮影を切り上げて、阿弥陀が森の女人結界門で休憩をしていると、数十人のグループが大普賢岳方面に歩いて行く。奥駈道を縦走するような雰囲気ではない。3~4人の先達がサポートしている。先達は山伏姿だが額に黒い例のものは無く(名前を知らない)、40cm程の編み笠をかぶっている。挨拶も丁寧で、何故か落ち着いて上品に感じた。テントに向かう頃から一気に天候は回復し、ガスが飛びさわやかな朝の青空となる。

  テントを撤収した後ブローニーフィルムは使い切ったので、ペンタックス67は仕舞い込み、デジカメを首に下げての帰還だ。日が昇るにつれ空は益々青くなり、新緑の色が更に冴えてくる。西の覗きを見上げる鞍部では、空の青さに岩の緑が何とも言えない調和を保っている。絵葉書になるような色合いだ。マタマタの偶然で、奥駈道を縦走した時に同じ道を歩いた同士に遭遇する。本宮から那智に向かった事等近況を話して分かれた。

 
 青空と新緑に輝く鷹巣(山上ヶ岳)

  洞辻茶屋では店の主人に掴まりまたも長居をしてしまう。今度はドリンクと味御飯のサービス付きだ、名刺交換を行い、次のチャンスには大峯山の写真をプレゼントする事を約束した。ここでは山伏姿の修験者とも信心の話、山を愛する気持ち等の話をし、気にいられたのかお守りとして水晶の小さな数珠をもらった。危険な山に入る自分の安全を祈願してくれた様だ。

  今回は3連休をフルに利用して、少しパターンを変えての山行であった。写真の方はパッとしなかったが良い出会いがあり、洞辻茶屋に私の写真を展示できるチャンスも出来た。最近にない充実した山行となった。五番関トンネル口で昼食をしながら、二組の夫婦と話しこみ、黒滝の「道の駅」付近の温泉場を教えてもらい今回はこの温泉で山行を締めくくった。

 Home  Back